湘南サーフ・ジャーナル 特集「佐久間浩さんxジョージカックルさん』

05-09_巻頭インタビュー.pdf

海の光と闇に包まれて・・・
遊び小屋で語る、湘南の今昔

“魂”がこもった海辺の家にこだわり、本物の海の暮らしを提案している逗子の不動産、
佐久間不動産の佐久間浩さん。そして、ラジオパーソナリティとして活躍中の鎌倉生まれのジョージ・カックル氏。
ふたりのディープでソウルフルなトークセッションをお楽しみください。

Photo: Taisuke Yokoyama Interview: Meiko Shinomiya

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SSJ : ジョージさんが生まれ育った鎌倉の街は昔と変わっていますか?

ジョージ・カックルさん(以下、ジョー
ジ): 変わっています。佐久間さんは
よく知っていると思うけど、鎌倉が変
わってしまったのは、遺産相続の税金
制度のため親の家に住めなくなるから
です。お屋敷を壊しちゃうのは、鎌
倉にとってマイナスだと思います。サン
フランシスコで家をもっていた時の固
定資産税は、実に面白い仕組みで買っ
た時の価値がキープされる。僕は毎年
2000ドル払っていたのですが、向い
に住んでいるおばちゃんは26ドル!
だ彼女が買った時は凄く安かったから、
税金も上げない。住民がずっと住める
ようにそうしてある。そして、サンフ
ランシスコには木の家がたくさん残って
いる。木の家って100年、200年
もつから。でも日本では、木の家を壊
しちゃう。なぜ? といつも思うんだ。
直せばいいじゃん。すぐ壊しちゃってコ
ンクリートのマンションに変身。それは
木の家がダメだというのではなく、頭
の中がダメなんじゃないかな。
佐久間浩さん(以下、佐久間): そう
だよね。悲しいことに日本人の家に対
する精神性が貧しいんだと思う。
ジョージ: シスコなんか100年前の
家だよ。4階建てのアパートも木造です。
佐久間: あれカッコイイよね。
ジョージ: 家を改造する時、
中は改造しても、道に面している所は残すんだ。そうすると街並みが変わらない。

SSJ : 日本ではそういう規制は?

佐久間: できるけど、文化財的なも
のに価値を置いていない今の税制のま
まだと残らない。戦後新しくなった相
続制度では、お金がないと庭付きの家
を泣く泣く売るケースも出てきます。
庭も家も壊れる。しだいに古い街は破
壊されていく。
ジョージ: 前にロンドンで、6階建て
の建物の横に同じくらいの背丈に樹が
伸びているという光景を見ました。樹
より背の高い建物を建てちゃいけないと
いう法律があるんですよね? 
佐久間: そう。建物を高くしていく
には樹の成長を待たなきゃいけない。
ジョージ: そうすると凄い緑の街に
なるのよね。俺が小学生の頃だから、
1960年代のことですが、よく親父とヨットで油壺(三浦市三崎町)に行く
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SSJ : そういう面白い家が昔はいっぱいありました?

佐久間: 油壺には結構あります。
ジョージ: あるよね。岩の上とか。
佐久間:“オンザロック”でしょ。

SSJ : 佐久間不動産はお父様の時代から海辺の住まいにこだわりをおもちでしたか?

佐久間: 親父はそこまで海にこだわっ
ていなかった。昔は、海辺のウォーター・
フロントに住まうのは外国人の人達だけでした

SSJ : いつ頃から変わってきたのですか?

佐久間:20年くらい前からです。
外国のセレブがしているような生活に憧
れる人が住み始めました。
ジョージ: 海のそばに住むのがカッコ
イイから住んでいる人の中には、実際
には海が好きじゃない人もいる?
佐久間:いるよ。カッコイイと皆言う
からという理由で。それじゃファッショ
ンだよね。実際の生活では、東京から
持ってきた精密機械が錆びちゃったりして泣くわけで。

SSJ : 本当に海が好きな人には、その錆びるのも良しとする価値観がありますよね。
佐久間さんは、葉山生まれの葉山育ちで、海のそばの景色の移り変わりも見てこられたのですね?

佐久間:56年見てきました。
海が人だらけだったのを覚えています。
森戸海岸は近くに娯楽場も多いので、
夜中まで人人人で竹下通りのようでした。
射的やスマートボール、パチンコ、ボーリング場もあったし、
金魚すくい、ヨーヨー、弓矢…。
ジョージ: 俺が子供の頃も由比ケ浜
で金魚すくいして、ラムネを飲みました。

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「もし、鎌倉という存在がなかったら、
日本には帰ってこなかったかもしれない。
東京の引力では帰ってこなかっただろうね。」  



SSJ : お二人が出会ったきっかけは何だったのですか?
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佐久間: たしか、葉山でのパーティーだよね。
ジョージ: サーファーって皆同じような
所にいるから、佐久間知ってるでしょ?
という感じ。誰も紹介はしてくれないんだけど、いつの間にか知り合いになってるから不思議。

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SSJ : 確かに、正式に紹介してくれたりしないコミュニティですよね。
好きなことをしているからか、楽しい人が多いし。

ジョージ: 好きなことをする。それが
サーファーの夢です。歳とってもう生活
の心配をしないで、いつでも、どこの海にも行ける。
佐久間: 最高の夢だよね。理想!

SSJ : そういう生活を普通に実現させている人達が湘南にはこんなにもたくさんいるということを、
東京の人達はあまり知らないのでは?

佐久間: 知らなくていいんじゃない
(笑)? 
ジョージ: 東京に毎日仕事に行く人
でも、こっちに住まないとわからない。
引退してこっちに来るというのとは意
味がちょっと違う。
佐久間: 引退してからだと体が利か
ない。遊びの方が仕事よりも大事。
ジョージ: 海は、コートを借りるのと
違って時間を決めて行けない。今日
波があるとは限らないし、休みの日に
都合よく波が来てくれればいいけど…。
だから、波合わせできる仕事をしよう
とする傾向がある。それがサーファー
の幸せです。
佐久間: どこかで帳尻を合わせて稼
げばいい(笑)。朝、波いいよと電話が
きて、すぐ行ければいいけど、2時間
後に行けば、風が入っちゃってオンショアでぐちゃぐちゃ。
特に、これから夏
は南風がどんどん吹いちゃうしね。
ジョージ: 俺なんか夏は、ラジオとレビ以外の仕事を入れないよ
東京に行かなくちゃいけない時は、
お昼を避けて夜、飲みながら打ち合わせをする。
江戸に出たからには江戸の生活も楽し
みたいので、終電までいるよ。

SSJ : ジョージさんにとって鎌倉とは?

ジョージ: 俺は途中、アメリカ人になる修行をするために(笑)、
向こうに18年間住んでいたんだけど、
もし鎌倉という存在がなかったら、
日本には帰ってこなかったかもしれない。
佐久間: 鎌倉はジョージのキーワードだね。
ジョージ: 東京に住んだこともあった
けど、東京の引力では帰ってこなかっただろうね。
電車がない時とか、
いろいろ不便さを感じることもあるけれど、
鎌倉の街に住むのが好きなんだ。
佐久間: 合っているんだね。
またその不便さがいいんだよ。
ジョージ: 別荘なら、鎌倉より葉山
の方がいいと思う。ペースがもっとゆっ
くりしているから。鎌倉は一応“街”
だけど、葉山はちょっとまたニュアンスが違う。
特別な何かがある。
他の日本の田舎へ行くと、普通の田舎。普通じゃ足りない。
佐久間: 適度に東京に近いし、適度
に田舎があって、適度にシャープ。そこがいいよ。
ジョージ: 鎌倉では当たり前のように、
近所のお寺や神社に行って、お賽銭を
ポン。生活の中で普通にする。
佐久間: 歯を磨くみたいにね。生ま
れた時から身に染みているから、宗教
をもたなくてもいいような。
ジョージ: 日が射すような感覚を味
わえる場所が、この辺りにはいろいろ
ある。こういう小屋なら、たとえ不便
な立地条件でもいい。
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SSJ : 湘南の昔と今を比較して、一番の違いはどういうところでしょう

佐久間: 建物が全部変わっちゃったところです。
戦後直後に戻していれば、この街はフリーズされた場所になる。
京都みたいな所。いっぱい人が来るよ。
そしたらもう壊せない。そういう
好循環になっていたはずなのです。
ジョージ: あと、鎌倉で変わったなと
思うのは、路地が広くなっていること。
佐久間: あれは建築基準法がよくな
い。消防車が入れるようにした ので
すが、そのために昔ながらの生垣や竹
垣、石垣も板塀が消えた。昔の石垣は、
またもの凄くいい石を使っているのです。
ジョージ: 鎌倉石ですよね。
佐久間: 凝灰岩でできた、やわらか
く細工しやすい石材で独特の風合い。
佐久間:それがコンクリート・ブロックに。
ジョージ: 路地に消防車が入らなけれ
ば、消火詮を置けばいい。
佐久間: ホースを用意しておけばいい
ことで…。でも、役人の頭って絶対消
防車が入らないとダメという考え方。
ジョージ: 路地がなくなるのは寂しい。
佐久間: 路地の文化が鎌倉の景観を
醸し出しているし、車が入らない路地っ
て逆に安全でしょ。子供も安心して遊
べる。碁盤の目のような路地や曲がっ
た路地は趣もある。

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「昔の湘南の海には、半端ない数の人たちがいた。
警察も協力的で、海の家のステージに出演したり、
夏の間は、毎日がお祭りだった。」  

SSJ : では、湘南で昔から変わらないものは何ですか?

ジョージ: 商店街の人から「今、誰々が通りましたよ」と声をかけられたり、
みんな顔見知りだという雰囲気がある
ところです。
湘南ラインで便利になって、
昔と比べたら観光客が多くなったかもしれないけれど、
鎌倉に来るのはほとんどが日帰りの人たち。
ホテルはあまりないし…。だから日が暮れたら、
また落ち着いた鎌倉の顔に戻る。昔の鎌倉の面影が見え隠れするところです。

SSJ : 湘南で過ごす、どんな一日が好きですか?

ジョージ: 朝起きて、コーヒー飲んで、
庭のプラントを見て、それから一日を始
めたいのです。波があれば海に行きた
い。あとは家で音楽を聴いたりします。
夏は海での大工を手伝いに行きます。
日に当たりながらの大工は最高。だか
ら、夏は仕事をあまり入れないように
している。夏は怠け者です。というか、
こっちにしかない毎日を味わいたい。冬
は逆に東京に行きたい。電車温かいから
佐久間: 父親が撮った昭和28
年頃の
海の写真を見ると、その頃からモデル
さんを森戸神社の裏に集めて撮影会を
したりしている。集まっている人たちは、
今でいうカメラ小僧。
ジョージ: 僕達の子供時代って、真黒
に焼けているのを競うコンテストがあっ
たじゃない?
佐久間: あったあった、当時は「黒ん
坊大会」って呼ばれてたよね。いかに健
康的で黒いかと!

SSJ : この写真を見ていると、昔の人みんな楽しそうですね?

佐久間: まったくハッピーですよ。人
の顔がニコニコしてる。元気。これから
良くなるぞと上を目指している。
ジョージ: 時代だよねえ。考えてみたら、
昔の海の写真って、逗子とかでも凄い人で賑わっていましたね。今とは比べられないほど。
佐久間: 半端じゃない。1日に10万人くらいいた。
親父が「ラッキーランド」っていう海の家をやってたんだけど、
ステージには警察やバンドが出てた。
警察も協力的で毎日がお祭り。

SSJ : いつまであったのですか?

佐久間: うちの親父のラッキーランド
(森戸海岸)でも、そういう光景をい
ろいろ見ました。たとえば、当時は高
級品の毛布を浜に惜しげもなく敷いて、
子供連れのファミリーがパラソルを立て
てバーベキューしていました。指くわえ
て見ていたら「食べていいよ」と。肉汁が
じわーっとソースと合わさっていて美味
しかった。後日、その子から遊びにお
いでよと誘われて、この近くにあったリ
トルアメリカの家に行きました。そこに
は、僕の背丈の倍くらいの冷蔵庫! 
中には、コーラ、ビッグなお肉やハム、
1ガロンの牛乳…。そこで僕は初めて
アメリカを感じました。これじゃ、日
本が戦争に負けるはずだと。その金髪
のお母さん、真っ赤なオープンカーに飛
び乗って、白い大きいフレームのサングラスをかけて、
僕らを乗せて横須賀基地に。
でかいストアで初めて目にするショッピング・カート。
7、8歳だから昭和36年くらいのことですよ。
そのカートで圧倒的な物流の壁の中に突進す
るのです。カルチャーショックに自国の
貧しさを思い知らされました。

SSJ : その頃は、皆がアメリカ文化の刺激を受けていた時代ですか?

ジョージ: 僕たちの子供の頃は、日本の男の子は白い半ズボンとランニング。
なのに、俺はジーパンとTシャツ。
周りの友達が皆サンダルみたいな白い靴を履
いていたから、逆にそれが欲しくて買っ
てもらってた。ってことは、日本文化
の刺激を受けていたのかな(笑)?

SSJ : 湘南の一部のエリアにいる人
以外は、アメリカの文化の刺激を受けずに暮らしていたのでしょうか?

ジョージ: そう。葉山や横浜の人がラッキーだったのは、
周りに外国人の人達がいて、いろんな文化に触れられたことだね。
ロックバンドもそう。
佐久間: あの頃、映画のヒーローみた
いな奴が普通にいたもの。横浜あたり
の街並も昔はまったく違っていて、素晴
しい外国建築の影響を受けた建物がい
っぱいあったんだ。“近未来”ならず、“近
過去”の写真を見ると面白いよ。なぜ
日本がダメになっちゃったのか解る。

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SSJ : これから先、失ったものを取り戻せるのでしょうか?

佐久間: 本気になれば! 何がリアルで何が本物かを見極める目をもつことです。
審美眼。一番いいのは本物を見ること! 建物でも、男でも、写真でも…。
偽物には魂が感じられないはず。一軒の家にもハートがある。

SSJ : 佐久間さんのこの遊び小屋は、いつ建てられたのですか?

1987年に。海の遊びをするための基地が欲しくてね。
昨年の台風で全壊したので、柱などは残して他は作り替えました。
今は、別の遊び小屋も佐島にあるんですよ。
そこは、最初に土地を見に行った時は、
山がドスンと落っこちている場所で、道もなかった。
絶壁の下は海で、その奥に土地がある。
1年がかりで道を自分で作って、
6年かけて家を完成させました。
よっぽど物好きじゃないとこんなことやんない(笑)。

SSJ : 湘南の将来は、どうなってほしいと思われますか?

佐久間: カルチャーを発達させて、みんなカッコ良くなってほしいね。
建物などを大切にして、緑いっぱいに。毎年1人が1本の樹を植える。
例えば一つのケヤキを植えるでしょ。100年経ったらケヤキって信じられないくらいに大きくなっちゃうよ。
199年なんて人間のサイクルでは長いかもしれないけ
ど、地球から見れば一瞬。今までに伐
っちゃった分、樹をいっぱい植えて、セ
ンスのある街に住みたいよね。
ジョージ: 今日、逗子の海に寄ってき
たら、海の家から
1m
のところまで水が
来ていて…。
佐久間: 砂浜が寝食されているよね。
それで高潮が来たら、もうやられちゃ
うよ。プロテクトできないんだもの。今、
地球人口が
65
億人にまで増加し過ぎて、
地球の資源が乏しくなっている。あと
50
年で
95
億人になるらしい。
ジョージ: 地球の重量より人間の総
体重のほうが重いんじゃないの(笑)。
佐久間: 地球は壊れ人類は滅びる。
次は昆虫の出番かも。
ジョージ: アリかもね。アリの団体行
動での動きには感動するね。自分の役
目がわかっている。
佐久間: アリに負けないように謙虚に
見習って、人間も今こそ真のソウルが
宿ったカルチャーを取り戻したいと思い
ますね。

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